一介の中年オヤジが突然コイン蒐集に目覚め、その時代を捜し歩く。 「古銭蒐集は貴族の趣味である」とはよく言ったものだ、と遅まきながら反省してる・・・・。取敢えず、タイからスタート。

2007年1月28日日曜日

25.真偽判定


16項に続き再び贋作について。バンコクはアジアの中でも有数の観光地となっているためか、たくさんの贋作貨幣にお目にかかれる。作っているほうは土産用との認識かも知れないが、販売側の一部では「本物だと保証」してる場合が多い。どこの露店でも数枚は展示している20世紀初頭の中国銀貨の場合、卸元からの購入価格は1枚当り30バーツ(約90円)程度と推測される。ひどいところでは販売側の最初の言い値は2,000バーツ以上から始まることが多い。タイのDvaravati期の銀貨の場合、卸元からの購入値にもばらつきがあるようで3,000バーツ程度は当たり前の模様。青銅貨や鉛貨では1,000バーツ程度から。今回は購入前の真偽判断について自分なりの見分け方を紹介する。
最初に本物の製造方法が鋳造か打刻かを考える。大雑把に言って溶かした金属を型に流し込むのが鋳造、元になる金属の上下を型でプレスするが打刻。一般的にアジアでは鋳造、西洋では打刻と言われているが、古代ローマの銅貨は鋳造などと例外もある。ちなみに世界最初の打刻貨幣は現トルコ付近に興ったリディア王国のエレクトロン貨幣。紀元前7世紀の話。ここで生まれた「貨幣を発行する」という概念はその後の古代ローマに伝わった、とは通説。
鋳造であれば表面に小さいながら気泡があり、打刻であれば気泡は発見できない。また金属の精錬技術の発達から気泡のサイズはだんだんと小さくなっていく。贋作を作る側の手抜きから、本来本物は鋳造のものを打刻で、逆に打刻を鋳造で作っている場合があり、この際の真贋判定はそれほど難しくない。
製法が打刻の場合、特に近代の銀製コインの場合、側面の溝の正確さでほとんど判定する。また、表裏全体の彫りが甘い、磨耗が均一でない、音が軽い等々。
鋳造はこれよりやや難しい。金(きん)製なら小学校の理科の教科書に出ていた条痕板を使う。金以外の金属では金色にならない。この方法の採用には勇気がいるが。銀製の場合は銀特有の錆が判断材料。よく磨いてから店頭に並べられることが多いが凹凸の境目に発見できることが多い。。近年作られた安物贋作には側面に同等の磨耗が無かったり、真新しいヤスリの痕があったりする。目の前のものがいつ作られたを考えるのも重要。流通当時に作られたものなら外観からの判定はお手上げだが、必ず金属の含有比率が異なり不自然な錆がある。タイの場合、Sukhothai朝より古い時代の貨幣は未だ研究途上であり、資料にすべての貨幣が網羅されている訳ではないので、資料に出ていないからといって贋作とは判断できないところが面白い。出回っている贋作を作った製作者は何らかの本物をコピーした筈なので、そのようなデザインの本物は存在したものと推測している。
結局はその他の骨董品と同じで、本物と贋作をたくさん見て回るしかないようです。写真は1900年吉林省製の「光緒元寶」銀貨の贋作。表の縁の彫が浅く、裏面に鉄錆が出ており、エッジの溝が一部二重になっている。本来13.10gのところ12.00gしかない。昔知人が2,000バーツで買ってきてくれた。

0 件のコメント: